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紺碧の将

大きいことはいいことだ

2011.02.23

 「なんだ、このブログは自然がどうのこうのとか民主党政権があまりにもひどいとかいい加減な経営者の笑える話だとかちょっとお利口な猫(また、自慢してしまった)の話題ばかりじゃないか」と指摘されたわけではないが、話題が偏ることはよくないので、以前の体験なども織り交ぜながらなるべく広範な話題で構成していきたいと思う。

 今回はインドのエローラ石窟群のことだ。

 4年前にインドへ行った。

 デカン・オデッセイという列車に乗ってムンバイから西海岸沿いを走り、世界遺産などを見て回る旅だ。今から思えばかなり贅沢な旅で、部屋ごとにバトラーがつき、きっかり朝6時にコーヒーを持って起こしに来てくれる。

 車内のダイニングにも専任のコックがついている。なんと、インドきっての名門ホテルといわれているタージマハルホテル(数年前、テロに遭った)の料理人である。

 列車はだいたい夜移動し、朝、到着したところでバスが待っていて、そこからさまざまな観光地へ連れて行ってくれる。ちょっとアブナイ所へ行くにもSPがついているので安心。はっきり言って、富裕層向けの安逸な旅で、ワイルドさにはとことん欠ける。当時はまだこういう旅に参加する余裕があったのだ。

 効率よく優雅に、そしてヘビに出会わないで世界遺産を回るには最適である。ほとんどがヨーロッパ人というのもわかる気がする。

 

 さて、エローラの石窟群だが、あまりの壮大さに度肝を抜かれる。アウランガーバードという町の郊外にあり、34の仏教、ヒンズー教、ジャイナ教の寺院や修道院で構成されている。つまり、インド人も宗教に関しては日本人と同じで鷹揚である。

 しかし、異なる点がある。

 われわれ日本人は小さいものを愛でる民族だ。工芸品も庭も陶器も小さいものが多い。茶室なんて、犬小屋を少し大きくしたようなサイズにまで縮んでしまった。日本人は、こと緻密な仕事ぶりに関していえば、圧倒的に世界一ではないだろうか。

 一方、同じアジア人のインド人はどうか。

 デカイ! なんてったって、着想が広大だ。だから、数学や天文学や哲学など、大きなスケールの学問が得意なのだろう。

 驚くことにエローラの石窟はほとんどがひとつの巨大な岩石を彫って造ったものだ。日本人なら小さなものを組み合わせて造るだろう。しかし、インド人はちがう。大きな岩に直接彫りを入れ、作品にしてしまう。

 おそらく上空から俯瞰する目をもっているのだろう。巨大な空間を把握するグリップの強さとスケールの大きさも尋常ではない。

 そのインド人のほとんどは日本人が好きなのである。

(110223 第231回 写真はエローラ石窟)

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