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紺碧の将

マッスと調和

2020.10.12

 Go ToトラベルやGo Toイートが始まって、人の動きが活発になってきた。みんなが萎縮していたらいずれ社会は窒息死してしまうのだから、憂慮すべきことではない。とはいえ、新型ウイルス感染が収束したわけではない。依然、リスクはある。警戒心を緩めず、いかに経済活動を回復させていくかが今後の課題だろう。あえて私が言うことでもないが。

 そんな状況下、美術館は安全性が高いと見ている。なにしろ会話をしない。入場者数さえコントロールしてくれれば、密になることもない。だからというわけでもないが、美術館で過ごす時間を大切にしたいと思っている。

 黒川紀章が設計した最後の美術館が、六本木にある国立新美術館。2007年に開館した同館は「森の中の美術館」というコンセプトを掲げ、国内では最大規模を誇る。コレクションを持たないという主旨も美術館のあり方に一石を投じた。

 黒川紀章らしいデザインだ。建築物としてのマッス(塊)は強固で曲面のうねりも量感がある。ガラス面に周囲の樹木が映り込み、周囲との微妙な調和をもたらしている。しみじみ見ると、案外悪くないなと思える。

 どちらかといえば黒川紀章は旧型の建築家だと思っていたが、この美術館を見ると、最後までいい仕事をしていたことがわかる。

 2007年12月、彼はこの美術館の始動を見届け、永眠した。いわば社会への置き土産がこの美術館でもある。

(201012  第1029回)

 

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