多樂スパイス
HOME > Chinoma > ブログ【多樂スパイス】 > 曇天の日の三保松原

ADVERTISING

私たちについて
紺碧の将

曇天の日の三保松原

2020.10.16

 日本人なら誰もが知っている名所、三保松原に行った。世界文化遺産にも登録されている。

 どうしても行きたかった。9月に行った北海道の大沼公園が存外素晴らしかったから。そのことを書いた項でも書いたが、日本新三景に選ばれているのが、その大沼公園と耶馬渓、そして三保松原だった。天の邪鬼を自認している私としては、そういうものに選定されているから行くというのは癪なのだが、つまらない意地をはっていいものを見逃すことがあってはならないと静岡方面へ行った際に立ち寄ったのだ。

 結論を先に書けば、とてもがっかりした。なぜならば、曇天だったからだ。海岸に沿って約3万本の松が生い茂るとあるが、歩ける範囲はそう広くはない。なんと言っても、三保松原の魅力は視界の両片隅に松林と白波を入れながら、雄大な富士山を望むことにある。富士山が見えない三保松原なんて、厚い雲に覆われた日に月見をするようなもの。事実、その日は訪れる人の姿もまばらで、海から吹いてくる風がことのほか身にしみた。

 ただし、三保松原の名誉のために言っておくが、天気が良ければ生涯記憶に残るほどの絶景が望めるにちがいない。かの安藤広重の浮世絵がそれを保証しているし、いにしえの歌人も三保松原をモチーフにさまざまな歌を詠んでいる。

 リベンジする機会があるかどうかわからないが、もしかすると、晴天の光景を想像するだけでいいのかもしれない。広重先生の絵を頼りに。

(2001016  第1030回)

 

本サイトの髙久の連載記事

◆海の向こうのイケてる言葉

◆うーにゃん先生の心のマッサージ

◆死ぬまでに読むべき300冊の本

◆偉大な日本人列伝

 

髙久の著作

●『葉っぱは見えるが根っこは見えない』

 

お薦めの記事

●「美しい日本のことば」

今回は、「身に入む」を紹介。秋の季語にある「身に入む」、「入」を「し」と読ませて「身にしむ」です。 五感で受け止めた風や光、香りなどを身内で深く感じる心を「身に入む」と言い表せば、なるほどそのとおり。目に見えぬものが身内に入り込んで心身を絡め取る。その瞬間、なにかに取り憑かれたような感覚をおぼえます。それが言葉であれば、なおさらでしょう。続きは……。

https://www.umashi-bito.or.jp/column/

 

【記事一覧に戻る】

ADVERTISING

メンターとしての中国古典(電子書籍)

Recommend Contents

このページのトップへ