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紺碧の将

自分から握手を求める

2020.10.20

 昨年9月から毎月1曲(あるいは数曲)選び、毎日最低1回は聴き続けるということを続けている。

 きっかけは十数年ぶりに会った人が「今年はマーラーの8番を生で聴けてよかった。マーラーの8番を生で聴いたのは2回目です」と言ったことだった。雑食を旨とする私だが、その曲の印象は薄かった。「千人の交響曲」の異名があるくらい大掛かりで、少し近寄りがたい雰囲気があった。

 そのとき思った。食わず嫌いはいけない、ここはいっちょう、腰を据えて集中して聴いてみようと。

 その後、毎日その曲を聴いた。曲の背景や作曲家の意図などを調べ、細部にわたって聴き込んだ。

 すると、どうだろう。半月もしないうちに親近感が増してきた。1ヶ月続けて聴いたあとは、曲と仲良くなれたと感じた。

 それから同じようにマンスリーミュージックを選んで聴き続けている。ちなみに、以下がその曲目である。

 

10月 ●ベートーヴェン/交響曲第1番

11月 ●プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第1〜5番

12月 ●シューマン/歌曲「詩人の恋」

2020年

1月 ●バッハ/平均律クラヴィーア曲集(全96曲)

2月 ●プッチーニ/歌劇「トスカ」

3月 ●ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ(全32曲)

4月 ●モーツァルト/弦楽五重奏曲(全5曲)

5月 ●マーラー/交響曲第2番「復活」

6月 ●シューマン/ピアノ三重奏曲 

7月 ●モーツァルト/歌劇「魔笛」

8月 ●シューマン/謝肉祭」

9月 ●ブルックナー/交響曲第9番

10月 ●フォーレ/夜想曲集(全13曲)

 というラインナップ。そのほとんどが今となっては、親しみの感じられる音楽になっている。あたかも気のおけない友人が増えたような感覚。

 それに触発されのか、ある時から毎日1枚のディスクを選び、就寝前にじっくり聴いてメモをとり、翌朝起きてすぐに音楽評というか音楽エッセイらしきものを書き続けている。クラシックが50%、ロックが40%、他がジャズやワールドミュージックなど。すでに166篇を数える。それらをもとに、いつでも連載を始められる。

 なんでもそうだが、自分から接近して握手を求めることが大切なのだと思う。もっとも、対人関係の場合、自分から名刺を差し出すことをほとんどしない人間ではあるが。

(201020 第1031回 写真はバッハの「インベンションとシンフォニア」の自筆楽譜)

 

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