新型コロナによって変わったこと
かねがね、問題だと思っていたものがいくつもある。例えば、食品ロス(大量廃棄)、あるいは24時間営業する店や深夜まで運行する公共交通機関。しかし、はからずも新型コロナの影響で、良い方向へ変わったようだ。
食べ物を大量に廃棄することの愚かさはどんなに書いても書ききれない。人類史的な犯罪と言っていい。腹いっぱい食べることが最大の希望であった時代が、つい数十年前まであったのだ。現に、この瞬間も飢えに苦しんでいる人が数十億人もいる。
一日に国内で廃棄される食品は、大型トラックで1,700台にもなるという。いったい、どれだけの〝命〟が無駄に終わってしまったことだろう。
コロナ禍で苦しむ人たちを追い撃ちしてしまうようで心苦しいが、私は飲食業に薄利多売という発想を持ち込むこと自体が悪いと思っている。「食べ放題」など論外である。
いま、3密を回避するため、テーブルの間合いを広くとっている店が多い。つまり、「多売」ができないということだ。多売を前提とした薄利なのだから経営が悪化するのは目に見えている。だから、これを機に自らの付加価値を高め、「少ない客数で高い利益をあげる」方向へと転換を図る飲食店が多くなることを願っている。もっとも、「言うは易く行うは難し」。それが叶うにはある程度の時間を要する。しかし、トライする価値はあるのではないか。
エネルギーを湯水のごとく使うのもいけないことだ。地下資源のないわが国は、食べ物同様、エネルギーを大切に使うべきである。しかし、いつ頃からか、電気と水はタダだという意識が蔓延してしまった。
コロナの影響で鉄道各社が終電の繰り上げ、始発の繰り下げをすると発表した。これはとてもいいことだ。いったい、なんの理由があって深夜12時過ぎまで鉄道を運行する必要があったのか? その時間、どうしても移動する必要がある人はタクシーを利用すればいい。
その他、満員電車の解消、東京の人口減少など、政府がやっきになっても解決できなかったことがコロナの影響で実現されつつある。また、マスクや消毒の徹底によってインフルエンザやぜんそくが激減し、風邪薬も売れないという。高齢者が院内感染を恐れて病院通いをやめたため病気が減ったという、冗談のようなデータもある。
反面、うつ病や自殺の増加など、負の面も浮き彫りになったが、それは「生き方・社会の見方を変えろ」ということでもあるだろう。
コロナに対する意識が低く、アメリカのようになってしまうのも問題だが、ものごとには必ず光と影がある。光の部分に着目すれば日々の心持ちもすこぶる良くなる。
そんなわけで、私はあまり現況を悲嘆していない。自分でどうすることもできないことは、なるようにまかせればいい。自分でできること、それは心持ちを変えるということ。簡単な話ではないか。
(201207 第1043回)
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