失われた耐性、『葉っぱ』電子版
去る3月のある日、体を冷やしてしまったことが発端で咳が止まらなくなった。胸につかえる感じや膨満感もあり、それに伴って鈍い痛みを感じることもあった。
じつは30年近く前、風邪をこじらせ、2ヶ月ほど咳が続いたことがあったのだが、そのときに気管支を痛めてしまったようで、その後、胸が冷えると咳が出やすい体質となった。あのとき、自然治癒にまかせず、早めに対処していればと悔やまれる。
いつもならすぐに対処すればすぐに治るのだが、今回はそうはいかず、日に日にひどくなった。こういう状況下だから、電車のなかで咳をしようものなら周りからどんな目で見られるかわかったものではない。市販の咳止めを飲んでもいっこうに改善されず。やむなく近所のクリニックを訪れるも診察拒否。
まあね、こういう状況だから、まっさきに新型コロナだと疑われるだろう。いくら、平熱なんですと言っても聞く耳なし。結局、南新宿の呼吸器内科を受診した。
ひどくなったとき、西洋医療はテキメンに効く。まず、レントゲン検査で重篤な病気でないことを確認。その後、呼気の中の一酸化窒素の濃度を調べる検査をした。結果、アレルギー性せきぜんそくと診断された。気管支にアレルギー性の炎症があると呼気のなかに含まれる一酸化窒素が上昇するのだ。もう少し悪化すると、ぜんそくというレベルであった。
薬を服用し、症状はまたたく間に緩和された。もちろん、対症療法だから、根本的な治療ではないが、いったん悪くなってしまったものは早めに症状を抑える処置をすることが大切だと痛感した。それには西洋医療が適している。そして、日々の生活における予防医学は東洋医療にのっとる。要するに、いいところを使い分ければいいのだ。
その後、つらつら考えた。マスクや消毒によって、雑菌などへの抵抗力が落ちているのだろう、と。
それについては、昨年の春頃から危惧していたことではある。過度に除菌すれば、バランスは失われると。空気中には無数の雑菌やウイルスがウヨウヨ存在している。花粉のシーズンであればなおのこと。それらがアレルゲンになり、冷えがトリガーになって今回の事態になったことは想像に余りある。
拙著『葉っぱは見えるが、根っこは見えない』にも書いたが、私は花粉症持ちである。しかし、花粉の季節になると積極的に花粉を吸い込むようにしていた。もちろん、薬は飲まない。花粉症の症状が出始めてから2週間ほどはつらいが、その以降、スーッと楽になる。例年そうだった。おそらく、体が順応していたのだろう。ところが、今年はそういうわけにはいかない。なにしろ、外へ出るときはいつもマスクを着用し、やたら消毒をさせられる。新型のウイルスが蔓延しているのだからしかたがないとはいえ、これではますます免疫力が低下してしまうと思っていた。
やはり、なにごとも〝やり過ぎ〟はいけない。それなのに、空気清浄機などでさらに室内の空気を浄化しようという人が後をたたない。小児科医であった真弓定夫氏の言葉がよみがえる。
「いちばん危険なのは、(エアコンなどでの)人工的な空気ですよ」
ところで、石原結實氏の著書をひもとくと、「アレルギー疾患は気管支内の余分な水分による冷えが原因。体内の余分な水分が外に吹き出てくる病気である。だから、ステロイドや抗ヒスタミン剤などで、体内の余分な水分や老廃物や有害物の排泄反応をおさえても治りにくいのは当然。水毒をなくすには保温、発汗、利尿などが有効」とあった。さすが、体の働きについて知悉していらっしゃる。
自著『葉っぱは見えるが、根っこは見えない』が完売となり、増刷はせずに電子版を発刊した。紙の本は1760円だが、電子版は1000円。興味がある方は下記にて購入できます。
(210531 第1078回)
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