It is dangerous to be sincere unless you are also stupid.
バーナード・ショー
たびたび本欄で紹介してきたバーナード・ショー。アイルランド生まれで、文学者でもあり、脚本家でもあり、劇作家でもある。のみならず、政治家でも教育者でもある。ときどきこういう人物が出現するが、要はクリエイティブであると同時に、広く社会を見渡す目を持っているということ。視野が広く、複眼的で、けっして付和雷同に陥らない。往々にして芸術家は視野が狭く、とんちんかんな意見を唱えたりするが、バーナード・ショーの平衡感覚はお見事というほかない。
曰く「愚か者でないならば、誠実であることは危険である」。
ということは、「愚か者」であれば「誠実であってもいい」と言い換えることができる。
では、この場合の愚か者とは? 字面のとおりに捉えてはバーナード・ショーの真意が伝わらない。
愚か者とは、愚直という意味ではないだろうか。反対語は「賢い」=小賢しい。つまり、さかしらな人が「誠実」をとり繕い、武器にすれば、きわめて危険だということ。政治家がきれいごとを並べたり、企業のトップがいかにも社会のためだとするレトリックこそが、それに当たるのではないか。
一見、誠実そう。世の中にはそんな落とし穴があちこちにある。エセ誠実を見極める目を養いたいものだ。
(第86回 211226)
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