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紺碧の将

The Sound of Silence.

ポール・サイモン

 中学生の頃、サイモン&ガーファンクルに夢中になり、すべての曲を和訳した。情報が乏しい時代で悪戦苦闘したが、学校の勉強より自分で調べることの方が断然面白いということに気づいた、貴重な体験だった。

 ポール・サイモンの詞はひと癖もふた癖もあるが、「The Sound of Silence」はその典型だ。当時、アメリカの大学の哲学科でもテキストに使われたそうで、表面的な解釈だけでは空回りするだけだ。

「静寂の音」、直訳すればそうなるのだろう。

 人間相互のコミュニケーションの欠如というテーマで解釈する人が多かったと記憶する。人間の声はもとより、社会のさまざまな音は、物理的にむなしく響くだけで、互いの心には入っていかないと。

 それもあながち間違いではないのだろうが、長じて東洋思想を学んだあと、もう一度この詞を読むと、もっとちがった角度からとらえることができると気づいた。禅でもそうだが、音になっていない音を聞こうとすることは、とくだん不思議なことではない。むしろ、はっきり聞こえる音だけが音だと思いこむ方がおかしい。

 音にならない音、もちろんそれは、心の音である。

 いやはや、ポール・サイモンの曲は50年以上過ぎて味わいが増すものが少なくないが、言葉もまたそうである。

(第88回 220109)

 

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