Our riches, being in our brains.
ヴォルフガング・A・モーツァルト
わずか35年という短い生涯の3分の1を旅に過ごしていたモーツァルトは、後世に残る膨大な作品を遺した。しかし、息を引き取るまで経済的な苦境は続いた。そんな人だからこその言葉であろう。
「私たちの財産、それは私たちの頭のなかにある」
どんなに莫大な財産を築いても、それを天国へ持っていくことはできない。それは誰もがわかっているはずだが、人間は金に執着してしまう。本来やるべきことを後回しにしても利殖に励み、あげく遺産相続問題を引き起こすタネになることもある。なんとも……。
それよりも、限られた一生のなかで、いかに幸福な時間を過ごしたか、その多寡を問うべきではないか。
『レ・ミゼラブル』にこんな一節があった。
「人に与える喜びには、反射のように弱まって戻るどころか、輝きを増してはね返ってくるという性質がある」
得ることばかりではなく、与えることにも意識が向けば、人は喜びを感じるということ。
現在、自分の頭のなかにある無形の財産、それに目を向けてみよう。
(第89回 220116)
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