There are two kinds of truth: the truth that lights the way and the truth that warms the heart. The first of these is science, and the second is art. Without art, science would be as useless as a pair of high forceps in the hands of a plumber. Without science, art would become a crude mess of folklore and emotional quackery.
レイモンド・チャンドラー
ちょっと長いが、チャンドラーの至言をひとつ。
意味は、「真実には2種類ある。ひとつは道を照らしだすもの。もうひとつは心を温めるもの。前者は科学、後者は芸術。芸術のない科学は、配管の工事人に手術用の鉗子を持たせるようなものであり、科学のない芸術は、民俗に凝り固まったと感情的なインチキ療法だ」。
最後のemotional quackeryがスゴい。そこまで言うか、と。
なにごともバランスが大切。上記の科学と芸術は、理と情と置き換えてもいい。左右の脳をバランス良く使うと言ってもいい。要は偏らず、中庸をはかるということ。
中庸という言葉を、「中途半端」と解釈している人がいるが、重大な間違いである。中庸ほど大切なものはない。どうしても片方(自分が好きな方)に偏りがちになるから、努めてバランスをとるようにしないと気がついたら手遅れということになる。
翻って自分に当てはめると……。
文章を書くこと自体は、理であろう。文法にのっとって言葉を並べるのだから。しかし、それだけで済むかといえば、そうではない。言葉の並びの上に(あるいは間に)情というパウダーをまぶさなければならない。じゃないと、無味乾燥な文章になり、読み手にじゅうぶん伝わらない。
では、どうすればいいのか。
それを考えることが愉しいのだと思う。
(第111回 230101)
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