Kites rise highest against the wind, not with it.
掲出の言葉は、2度目の登場。ある意味、掟破りをしているのだが、そうまでする理由がある。折につけ、この言葉を噛み締めたいのだ。
目標に向かって何かをやり続けているとき、必ず大きな壁に直面する。そのとき、どう対処するかで、「その後」が大きく変わる。
第二次世界大戦中、戦況が著しく不利になっていた英国を率いたチャーチルは、その楽天的な思考によって幾多の困難を乗り越えた。そんな彼の言葉は黄金のような輝きを放っている。
曰く、「凧が最も高く舞い上がるのは、追い風を受けたときではなく、向かい風を受けたときである」。
なにが言いたいかは一目瞭然だろう。逆境に置かれると、人はふだん出せないような力を発揮し、困難を乗り越えることができるということ。
一国の盛衰を分ける瀬戸際のような状況においてばかりではない。あらゆる場面でこのことが言える。反対の言い方をすれば、順風満帆で得られる結果など、たかが知れている。
世の中には「こうすればうまくいく」というハウツー的な情報が溢れている。しかし、世間を見渡したところ、うまくいっている人はさほど多くないような気がする。それもそれだろう。ほとんどのハウツーは「できるだけ楽をして、手っ取り早く手に入れよう」という主旨のものばかりだから。
本田宗一郎の名参謀として影で支え続けた男、藤沢武夫はこう語っている。
「経営学の本を何冊か手にとって読んだことはあるが、結局その逆をやればいいんだと思った」
ありきたりの経営学に背を向けた藤沢は、想像を絶する逆風を受けたにちがいない。実践を経てその効果のほどを試し、オリジナルの経営観を獲得したのだ。
逆風を歓迎するくらいの気概を持ちたいと思う。
(第128回 240606)
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