I now begin the joumey that will lead me into the sunset of my life.
前回に続き、元アメリカ大統領の言葉を。ただし、今回の言葉は人々を鼓舞するものではない。人間として生まれ、生をまっとうした後の澄み切った心と諦観が入り混じった、しんみりとする言葉である。
意味は「私はいま、人生の黄昏にいたる旅に出かけます」。
1994年、ロナルド・レーガン元大統領は、自らアルツハイマーであることを公表し、こう言葉を結んだ。そして、10年後、彼は他界した。「the sunset of my life」という言葉が切ない。しかし、そこに至るまでを「joumey」と表現したところに彼独特の機知がある。
政治家に不可欠なのは、「どういう社会にしたいのか、そのためになにをすべきなのか」ということを考え、伝える能力を備えていること。構想力のない人は論外だし、あったとしてもそれを伝える能力がなければいけない。そういう意味で、レーガンは稀有な政治家であったと思う。
そんな彼には、ほかにも印象に残る言葉がある。
――この世の中には2種類の人間がいる。できる人間と批判する人間だ。
――ゴルバチョフさん、この壁を壊しなさい。(ベルリンの壁の前で)
――人々が戦争を始めるのではない。政府が始めるのだ。
最後まで賢明でチャーミングな政治家であった。
(第130回 240804)
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