I don’t sound like nobady.
――ほかの人と同じ音楽はやりたくない。
多かれ少なかれ、芸術家にはそういう気質がある。否、芸術家だけではあるまい。スティーヴ・ジョブズも「Think different」と言った。考えてみれば、当たり前の話だ。みんなと同じことをしていたら、なにも突出したものは生まれないのだから。それにしても、 動詞に sound を使っているのがニクイ。
周りの人たちに合せていれば、なんの摩擦も軋轢も生まれない。まして、同調圧力の高い日本の社会では、それが無難に生きる要諦といえるだろう。しかし、それでは自ら「あなたの人生、以下同文。はい次」の一人になるということでもある。オルテガは、「周りの人たちと同じでいい、特別の責務を負いたくないと考えるのが大衆で、必ずしも自分がやらなくていいことをあえて引き受けるのがエリートだ」と言ったが、そういう意味ではエルヴィスもエリートの一人だったということか。
もちろん、それは責任感とか義侠心とか志とか高尚なものに源を発するものばかりではなく、自分の裡から湧き出る本能に従った結果とも言えるだろうが……。
いずれにしても、ほかの人と異なる道を歩んだ者になんらかの果実が得られるのは真実のようだ。それと引き換えに孤独になったとしても。
(第32回 201223)
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