Think of nothing things, think of wind.
トルーマン・カポーティ
村上春樹のエッセイ集『サラダ好きのライオン』で見つけた。「何ひとつ思うな。ただ風を思え」という意味。nothing thingsという言い回しは一般的かどうかわからないが、語呂もよ、洒落ている。さすがはカポーティ。
現代人がただ風の音に意識を凝らし、なにひとつ思わないことなどないだろう。
日常における首の角度と心もちの相関関係を研究する人がいたら面白い。首が下を向いている人はあまり幸せそうには思えない。しょんぼりしているか、ずっとスマホに見入っているかのいずれかだろう。
では、首が上を向いている人はどれくらいいるのだろうか。筆者は道行く人たちや電車のなかなどで観察しているが、上もしくは正面を向いている人はかなり少ないようだ。
その昔、坂本九さんは「上を向いて歩こう」と歌った。『ティファニーで朝食を』や『冷血』を書いたカポーティは「ただ風を思え」と言った。ときどき、こんな言葉を思い返し、日々の姿勢をチェックしてみよう。
(第41回 210228)
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