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紺碧の将

いわゆるひとつのレイドバック

file.061『461オーシャン・ブールヴァード』エリック・クラプトン

 クラプトンは、かなり好きだ……と思う。たぶん。いちおう、ヤードバーズ、ブルース・ブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク&ドミノスからソロに至るまで、すべてのアルバムを持っている(1974年に発売された、この『461オーシャン・ブールヴァード』まではLP、それ以降はCDで)。コンサートにも何度も足を運んでいる。

 クラプトンの長いキャリアのなかから3枚を選べと言われたら、迷わず『461オーシャン・ブールヴァード』と『いとしのレイラ』『安息の地を求めて』となる。

 クリーム時代、ギンギンのギター弾きだったクラプトンは、その後、麻薬に溺れて廃人同様になった。よろよろになりながらも仲間たちの助けを借り、レインボー・コンサートで復活。数年の休養を経て発表したのが「レイラ」だった。デュアン・オールマンという天才ギタリストとの共演は、リラックスした雰囲気のなかでも異様な火花を放っていた。

 以来、4月年近く経て発表された本作は、シングル「アイ・ショット・ザ・シェリフ(I shot the sheriff)」とともに初の全米1位を獲得し、かつまたジャマイカという辺境の英雄だったボブ・マーリィを世界に紹介するきっかけともなった。

 タイトルは、クラプトンの当時の住所。ジャケットにも写っている家は、マイアミの北東部、ゴールデンビーチの街にあるオーシャンブルヴァード461番地に実在した。

 魅力的な曲が満載である。ひときわ印象深いのが、「ギヴ・ミー・ストレングス(Give me strength)」や「プリーズ・ビー・ウィズ・ミー(Please be with me)」のドブロ・ギターの音色。「これがあのクラプトンのギター?」と拍子抜けするほど肩の力が抜けている。スライド・ギター風の純朴な音は、健康を取り戻した当時のクラプトンの心の風景でもあっただろう。

 日系人ヴォーカリスト、イヴォンヌ・エリマンとの共作「ゲット・レディ(Get ready)」や偉大なブルースマン、ロバート・ジョンソンのカバー「ステディ・ローリン・マン(Steady rollin’ man)」など聴きどころもたくさん。クラプトンの自作「レット・イット・グロウ(Let it grow)」も泣かせる。

 このアルバムには、ひときわ強烈な記憶がある。高2の夏休み直前、友人と野球をやっていたとき、無理なダイビングキャッチをして膝をひねり、骨にヒビが入った。片脚を石膏で固められ、夏休みの間、ずっと外出できなかった。

 そのとき買ったのがこのアルバム。時間をもてあまし、来る日も来る日も聴き続けた。将来に漠たる不安を抱きながら現実から目をそむけ、クラプトンの〝安息の地〟に浸り続けた。そのときの記憶が強烈で、いまだにオープニングの「マザーレス・チルドレン(Motherless children)」のイントロを聴くだけで当時の部屋の風景や心の様子がよみがえる。

 音楽は記憶とセットになり、死ぬまで脳裏にストックされるのだろう。

 

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