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紺碧の将

力を抜けば抜くほど力が出る、声のオリジナリティ

file.084『ハーヴェスト』ニール・ヤング

 オリジナリティが重要だという話をよく聞く。とりわけ芸術(アート)の分野において。

 音楽のジャンルで究極のオリジナリティといえば、その人が持って生まれた「声」だろう。こればかりは練習で磨いたとしても限界がある。

 つくづくニール・ヤングの声は徹頭徹尾オリジナリティだなあと思う。

 彼の声は、1マイル先から聴いてもわかると言われている。パッと聴いただけではどこに魅力があるのかわからない声だが、聴けば聴くほどやみつきになる。やる気のなさそうな、弱々しい声なのに、妙に味があるのだ。まさに「力を抜けば抜くほど力が出る」タイプ。

 作曲の能力も高いし、ハーモニカのテクニックも名人芸だ。

 そんな彼の代表的な作品といえば、1972年に発表された『ハーヴェスト』に尽きる。盟友スティーヴン・スティルスとグラハム・ナッシュ、さらにはジェームズ・テイラーとリンダ・ロンシュタットという豪華バック・ヴォーカル陣がなんとも贅沢。

 しかも、その使い方がツボを抑えている。「孤独の旅路(Heart Of Gold)」ではゲストのジェームズ・テイラーとリンダの声がなかなか聞こえてこない。いよいよフェイドアウトという段になって、ようやく二人の声が現れる。わずか20秒。料理の隠し味のような効果がある。

 こういうセンスは、その人の人間性にも由来するのだろう。なにごとにおいても「どうだ!」をかまさないと気がすまない人にはできない芸当だ。

 オープニングの「週末に(Out on the Weekend)」、アルバム・タイトル・ナンバー「ハーヴェスト(Harvest)」、「アラバマ(Alabama)」など、半永久的に聴き継がれるであろう佳曲が揃っている。

 私にとってこのアルバムは特別な1枚。死ぬまで聴き続けるだろう。

 

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