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紺碧の将

黄色地に白字の音楽

file.095『ハリーズ・ハウス』ハリー・スタイルズ

 時には新しめの音楽を取り上げよう。

 毎週、小林克也の「ベスト・ヒットUSA」を観ている。とりあえず現代のロック・ポップシーンをチェックしておきたいと思っているからだ。大半は私の好みに合わず、聴き流しているが、今回紹介するハリー・スタイルズや次回紹介するジャズ・シンガーのサマラ・ジョイ、あるいはモーガン・ウォーレンなど、ときどき「これは!」というものに出くわす。

 ハリー・スタイルズはイギリスのシンガーで、元ワン・ダイレクションのメンバー。彼の3枚目のアルバム『ハリーズ・ハウス』(2022年発売)がいい。

 曲そのものは、どちらかといえばオーソドックス。しかし、リズムの作り方やブラスの取り入れ方、アレンジ、声の重ね方など、やはり現代風だなと思う。

 このアルバムのジャケットを見ると、意外なところがある。ジャケット裏の収録曲リストが、黄色地に白字(箔押し)なのだ。グラフィック・デザインのセオリーとしては、あまり使わない配色である。しかし、それだからこそ妙な新鮮味があるともいえる。この配色は、そのままハリー・スタイルズの音楽に通じている。自己主張が希薄というか、草食系というか、さらっとしているのだ。

 バカ売れしている「アズ・イット・ワズ(As It Was)」のほか、「レイト・ナイト・トーキング(Late Night Talking)」、「ミュージック・フォー・ア・スシ・レストラン(Music For A Sushi Restaurant)」、「マチルダ(Matilda)」の4曲が同時にビルボード・チャートのトップ10にランクインするというのは、ビートルズに続いて史上2組目という。

 売れているからいいものとはけっして思わないが、ひとつの目安にはなる。そういうもののなかから、次世代に残るもの、あるいは半永久的に残るものが現れる。ビートルズはいまやクラシックだが、彼らのデビュー当時、そうなることを予測した人はほとんどいなかったにちがいない。

 また、このアルバムはグラミー賞で最優秀アルバム賞と最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞している。グラミーを獲ったからといって、いい作品とは限らないが、これも参考のひとつにはなる。

 要は、「この次」どういう進化を遂げるのか、だろう。自分のスタイルをつくりつつ、いかに持続できるか。その真価が問われる。

 

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