夢なき者に理想なし。理想なき者に計画なし。理想なき者に実行なし。実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功はない
吉田松陰
幕末、維新に活躍した数多くの志士たちを輩出した松下村塾。師の吉田松陰の言葉である。
何をもって成功というのか。
百人いれば百様である。
夢はなにか?
理想はなにか?
それさえはっきりすれば、成功を手にしたも同然。
地位や名誉、富といった小さな夢ではなく、もっと大きな理想を掲げれば、その成功は多くの人の喜びや幸せをも生むだろう。
松陰先生の夢は、きっとそうだったにちがいない。
第二次世界大戦末期に戦没した日本の学徒兵の遺書を集めた遺稿集『きけ わだつみのこえ』の序文で紹介されていた、フランスの詩人ジャン・タルジューの詩が思い出される。
〝死んだ人々は、還ってこない以上、
生き残った人々は、何がわかればいい?
死んだ人々には、慨(なげ)く術もない以上、
生き残った人々は、誰のこと、何を、慨(なげ)いたらいい?
死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?〟
今の日本、もっといえば世界中が夢や理想を抱きづらい世の中になっている。
しかし、そういう今だからこそ、松陰先生の言葉は生きてくるのではないか。
時を越えて、師の声なき声がこだまする。
(160820 第227回)