飽きることは、実は脳の才能のひとつです
脳科学者の茂木健一郎が、脳の研究によって導きだした答えのひとつ。
未だ完全に解明しきれていない脳のしくみは、知れば知るほどおもしろい。著書『幸福になる「脳の使い方」』から抜粋した。
「飽きっぽい」と聞くと、ネガティブな印象を持つが、これはきっと、捉え方の問題だろう。
実際、あれもこれもと手をだす人を「飽きっぽい人」と言うのだから。
飽きっぽい人は、何か満たされない思いがあるのだと思う。
本当の「飽き性」は、何かに夢中になっていたと思ったら、突然、他のこともしてみたくなるということ。
つまり、夢中に、がむしゃらにそれに向かっていると、どんどん慣れてきて物足りなさを感じるようになるということだ。
茂木氏は、これこそが脳の特徴のひとつであり、「変われる」ことが脳の才能だと言ってはばからない。
趣味に飽きる、勉強に飽きるといったいろいろな「飽きる」がある中で、最も重要な感覚が、「今の自分に飽きる」であると。
今の自分に飽きたらどうするか。
「自分はもっと変われるはずだ」と、チャレンジ精神は旺盛になるだろう。
それが、本来の人間の脳が求めるところであり、人の成長に一役も二役も買う感覚なのだ。
アスリート選手や職人など、何かに打ち込んでいる人は「飽きる」ことの天才である。
打ち込めば打ち込むほど、「まだまだ」と高みを目指して「今の自分」から変わろうとするのだから。
「飽きる」という感覚は、あれもこれもではわからない。
ひとつのことにとことん尽くしてこそ、「飽きる」の本当の意味がわかる。
何かに飽きるということは、変わろうとする脳からのサイン。
逆説を言うなら、変化し続けるものは、飽きることはない。
飽きっぽい人は、夢中になれる何か、自分が変われる何かを常に探しているのかもしれない。
(170413 第305回)