我以外、皆我が師なり
『宮本武蔵』で知られる作家の吉川英治が、その著書の中で記した言葉である。武蔵の言との説もあるそうだが、実際は、吉川氏が好んで使っていたという。この言葉を座右の銘とする人も多いと聞く。
人は一人では生きていけない。
空気があり、大地があり、空や太陽、自然の働きがあってこそ、生きることができている。
食べ物はどこからきたのか。
着ている衣服はだれが作ったのか。
パソコンやスマホは? 靴やバッグは?
見渡せば、身の回りにあるものすべて、自分以外の力が働いていることがわかるはず。
食べ物が身体をつくるように、目にするもの、耳にすることは、言葉や行動の骨格をつくる。
子供たちを見ればわかりやすい。
赤ん坊は身近な親を手本として育ち、やがて周りの大人たちや他人とのかかわり、自然とのかかわり、絵本や遊びの中から学んでゆく。
大人も同じ。
むしろ、それまでの経験から蓄積した知恵や知識が多ければ多いほど、自分以外の何かの力をもらっている。
嫌な人を見て「こうはなりたくない」と思うこともあるだろう。
反対に、素敵な人と出会えば「いいなあ」と憧れを抱くことも。
どちらにせよ、人の振り見て我が振り直せ。
嫌な人は反面教師に、憧れる人はお手本として、自分の言動をチェックする。
人だけではない。
動植物、この大自然そのものがお手本であり、さらには起こる出来事、環境、状況、境遇までもが成長へ導く師となるだろう。
(180203 第399回)