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No.29

博物画家 長谷川哲雄さんと
初夏の野を歩く

Contents

 ボタニカルアートのルーツは、西洋の古い植物図譜にある。植物についての知的情報—本草学に代表されるような—の伝達や普及を目的に出版されたものであり、近代植物学の発展には欠かせないものだった。
 十八世紀から十九世紀にかけては、世界各地から美しい動植物がヨーロッパにもたらされ、さまざまな美しい図譜が数多く出版された。その頃には学術的な目的ばかりではなく、鑑賞を意図した趣向や装飾もこらされていて、たいへんな人気を博していたという。
 宇都宮市在住の博物画家、長谷川哲雄さんはボタニカルアートの作家で、植物や昆虫の図鑑や画集などを出版している。子ども向けの植物や昆虫の図鑑はいずれもロングセラーだ。
 また、画家である長谷川さんは、筆をペンに持ち替えて文章も綴る、自然派のエッセイストでもある。美しい水彩画と文章でまとめられたエッセイ集は、おとなの知的好奇心をも満足させるに足る、瑞々しい空気感に包まれている。
 博物画に対する「美しい植物の絵」という認識は長谷川さんとの出会いによって変わり、絵画にこめられた数々の—秘密の—扉を発見することができた。作品の持つ確固たる説得力について、その一片をかいま見たような気がする。
 わたしたちが簡単に口にする自然というものは、わたしたちが癒されるために存在するものでも、誰かや何かを生息させるために存在するものでもなく、宇宙に煌めく星の数ほどの化学変化と、何次元もたたみこまれた時間の結合の結果にすぎない。
 この、果てることのない無垢の営みの小さなひとつひとつ、とりわけ植物や昆虫の生態は、あるときはわたしたち人間にとって羅針盤であったり、またあるときはメタファーであったりする。彼らをより深く知ることは自然を、さらには人間をより深く知る近道にもなるだろう。
 長谷川さんは、小さな子どもの頃から自然を知る楽しみを知り、絵画という手段でそれを表現してきた。
 この特集で長谷川さんの作品を鑑賞しながら、創作のさまざまなプロセスに触れ、自然観察や博物画について興味を持っていただけたら、幸いに思う。

●企画・構成・取材・文・制作/五十嵐 幸子・都竹 富美枝
●写真/渡辺 幸宏

 

● fooga No.29 【フーガ 2004年 6月号】

●A4 約90ページ 一部カラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2004年5月25日発行

 

おかげさまをもちまして、完売いたしました

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