No.43
風と星と水の聖地
奥日光
Contents
ほしのみちを探して「男体山の裏側を走る林道を走り続けると、いきなり眺望のひらける場所にでる」
「そこからは、関東平野はおろか、富士山までも一望できるすごい場所である」
「夜は満天の星が瞬き、地球規模のプラネタリウムのようなうえに、首都圏の夜景までもが星空とつながって見える」
さらに、
「地図にも載っておらず、ほとんど地元の人でさえも、その場所の存在そのものを知らない」
「車で行くことは不可能で、たどり着けるのはオフロードバイクの上級者のみであろう」
「一生に一度は行ってみたい」
「その道を『星山林道』という」
その昔、バイク乗りの友人がまことしやかに語っていた話。
奥日光に慣れ親しんだわたしでさえ、星山林道なんて聞いたこともありませんでしたが、星の降る道という響きは皆のなかでいつか伝説を化し、妄想だけが一人歩きしていきます。
そこで日光市出身で、奥日光の写真を何十年も撮り続けている写真家の高野康男さんに案内を願いでました。
奥日光にはまだまだわたしたちでら知らない場所がたくさんあります。ここに何十年も住んでいる人でも、実際見たことがない自然の営みにあふれています。奥日光の魅力を端的に語るとすれば、そのようなことでしょうか。
狭い地域にさまざまな地形が形成されているところ。平面に置き換えるとわずか12km四方の面積に、山や森、川や湖沼、湿原、草原、滝などが箱庭のように配置され、しかも刻々と変化する、まるで自然のテーマパークのようです。
ふたつめは、標高と属する気候帯が変わることにより自然の変化。なにしろ車でたった5分走っただけで、周囲の感じが変わってしまうのです。さらに気候の変化は動植物の生育に多大な影響を与えています。図鑑でしか知らなかったさまざまな生物を間近で見る新鮮な驚きと感動。生々しい自然に身を置くことで、人間の五感はバランス良く刺激されるようです。
もうひとつ、奥日光の自然を守り、人間が共生できる環境を維持するために、多くの人たちが関わっているという事実です。官公庁や民間、営利やボランティアなど立場の垣根を越え、奥日光の未来にとってベストな方向は何かを真剣に探り、議論し、行動する人たち。それぞれ、ほんの片鱗しかお伝えできませんが、その続きはぜひ、この地に足を運んで自分の目で探してください。
『星山林道』についてですが、尋ねると誰もが、もちろん知ってるよと応えてくれます。けれどもそれらはひとつとして同じ場所ではないようで、きっとみんな、自分だけの「ほしのみち」を持っているのですね。それにしても話に聞いていた場所とはずいぶん違う気がして、あれはライダーたちの憧れが創り出した、まぼろしの場所の名前だったのかもしれません。
●企画・構成・取材・文・制作/五十嵐 幸子・都竹 富美枝
●写真/渡辺 幸宏
● fooga No.43 【フーガ 2005年 8月号】
●A4 約90ページ 一部カラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2005年7月25日発行
おかげさまをもちまして、完売いたしました
fooga Lineup
-
No.92
愛の使者 スターリィマン
はせがわいさおファミリー
が織りなす「家族の絆」 -
No.91
かめのようなくま
あおいくまさん、窓際からの挑戦 -
No.90
日本再興の大波を起こす
経営思想家 田口佳史、
乾坤一擲の大仕事 -
No.89
兼元謙任、流転の海を泳ぐ
ホームレスだった社長が伝える
「生きる愉しさ」 -
No.88
カリスマ模型師
芳賀一洋の創造力 -
No.87
墨の愉しさに遊ぶ
書家
川又南岳 -
No.86
心を織る 織物作家
善林ひろみの慈しむもの -
No.85
着物スタイリスト
石田節子の来し方 -
No.84
一瞬の煌めきに命を懸ける
花火師
田島浩の仕事 -
No.83
若きサムライ炭焼師 原伸介、
職人の魅力を信州から発信 -
No.82
月夜の旅人たち
加藤千代の神秘的な染画の世界 -
No.81
本物の桃源郷
失われた日本の美を求めて -
No.80
国民に希望を、自治体の首長に勇気を
中田宏×高橋克法
夢のある話をしよう -
No.79
失われる時を求めて
日本画家
阿良山早苗の描く懐かしい情景 -
No.78
日本一単純な男
てんつくマンが
世界を変える!(かも) -
No.77
邪鬼、目覚める
陶芸家
藤原郁三の逆転の発想 -
No.76
書に尽くし、書に生きる
上松桂扇の心に宿る、
上松一條の魂 -
No.75
接客の奥義。 元マキシム・ド・
パリのメートル・ド・テル
秋山隆哉の人生作法 -
No.74
moment. 感じる瞬間
写真家
森日出夫のファインダー -
No.73
パリ×京都=ワサブロー
永遠の異邦人・ワサブロー -
No.72
本物はアウェーでも勝つ。
挑み続ける男、
セルジオ越後の軌跡 -
No.71
演じることは、生きること。
横浜夢座座長・五大路子 -
No.70
文化とビジネスの幸福な融合
二期倶楽部 代表・北山ひとみが
描く、文化の桃源郷 -
No.69
「ねえ、これいいでしょ」
北原照久、筋金入りの
蒐集(コレクション)人生 -
No.68
時空を描く
日本画家 片柳直美の世界 -
No.67
ぼくのともだち
ハマのプチ・ファーブル
熊田千佳慕が描き続ける小さな命 -
No.66
からくり人形師 半屋弘蔵
からくりとは魂の技術である -
No.65
横浜市長
中田宏レヴォリューション -
No.64
知る愉しみ。
小原二郎の研究人生 -
No.63
サクラサク。 陶芸家
島田恭子の咲かせる花 -
No.62
陶芸家 成良仁の来た道、
造形作家 南田是也の行く道 -
No.61
風のように 山のように
柿沼翠流、書の桃源郷へ。 -
No.60
私流を生きる
和紙人形作家 田村顕衣 -
No.59
釣りの魔力
トーナメントアングラー 大森誠 -
No.58
刀工
加藤慎平・日本刀の美学。 -
No.57
尋花澄泥硯
明石良三が恋した、幻の硯 -
No.56
建築家
隈研吾の作法 -
No.55
幽玄を舞う
観世流能楽師・渡邉洋子 -
No.54
よく働き、よく遊び、
伊藤信夫、今日も完全燃焼! -
No.53
しあわせが宿る えほんの丘へ
いわむらかずおの
絵本の世界にふれる -
No.52
菓子づくりに魂をこめて。
西原金蔵、仕事の幸福を堪能す -
No.51
田川
街に流れて -
No.50
努力するということ。
凛として美しい、
和久文子の箏人生 -
No.49
輝きを追いかけて
若き書道家 赤澤寧生の
静かな咆哮 -
No.48
瀑音水飛沫
世界三大瀑布を完成させるまで
松本哲男の壮大なる挑戦 -
No.47
永遠に変わらぬものを
林香君の見つめる先 -
No.46
熱くて温かいニッポンの男
船村徹、ひとり列伝 -
No.45
男の華道 華道家
川上裕之が拓く
いけばなと造形 -
No.44
命の躍動を撮る
動物写真家・福田俊司の
メッセージ -
No.43
風と星と水の聖地
奥日光 -
No.42
いただくといふこと。
坂寄寛がたどりついた
料理の愉しみ -
No.41
美の生い立ち
新世紀のBonsai Artist
森前誠二 -
No.40
千年の時をつなぐ。
小川三夫が現代に伝える
飛鳥の工人の技とこころ -
No.39
絵描きほど素敵な人生はない
孤独で幸せ
今村幸治郎の世界 -
No.38
あたたかな石の異世界
大谷へ -
No.37
漆アート[URUSHI-ART]
宮原隆岳・宮原楓翠
創造のストレイン -
No.36
眠れる衣のものがたり
馬場和子さんのオートクチュール -
No.35
花のある空間。
フラワーデザイナー
佐藤康之 -
No.34
メイキング オブ
「見川鯛山、これにて断筆」 -
No.33
新・リーダー論
宇都宮市長・福田富一が描く
近未来風景 -
No.32
プリミティブな呼吸
ricchan
@DANCE DANCE DANCE -
No.31
FACE OFF
日光アイスバックス 躍進の可能性 -
No.30
内なる宇宙への旅人
宮坂健のファンタジックワールド -
No.29
博物画家 長谷川哲雄さんと
初夏の野を歩く -
No.28
音楽の香りを
小川倫生のギタープロジェクト -
No.27
カクテルは人生と
恋の数ほどございます。
バーテンダー 田島明 -
No.26
若きチェリストの春秋
世界へ羽ばたけ
宮田大 -
No.25
ミニ蒸気機関車に夢を乗せて
汽車工房
山口勇の悦楽人生 -
No.24
森羅万象を折る
吉澤章
「ORIGAMI」の世界 -
No.23
独木に想いを託して
露木惠子、その清冽な
日本画の世界 -
No.22
和食で味わう
栃木食さい(後編) -
No.21
和食で味わう
栃木食さい(前編) -
No.20
日光東照宮 -
No.19
見川鯛山は、
人生を愉しむ達人だ。 -
No.18
いにしえからみらいへ
ふたつの美術館を訪ねて -
No.17
高田契と歩く
芭蕉の下野路 -
No.16
パリ・イシ オーナーシェフ
吉田忍の野望 料理は格闘技だ。 -
No.15
栃木とフレンチのマリアージュ
音羽和紀シェフの挑戦 -
No.14
創る
受け継がれる技、生み出される魂 -
No.13
愛という字
酒井真沙のあしあと -
No.12
酒神の宿る蔵
2人の杜氏 -
No.11
奔れ! タカハシ
高橋靖史、現代美術の新境地を拓く -
No.10
小田島造船所の仕事場
小田島建夫に学ぶ大人の遊技 -
No.9
ロードレースの聖地へ。 -
No.8
「絆」
そばにあなたがいてくれたから -
No.7
「本」を食べよう -
No.6
愛すべきY染色体たちの
ディープな世界 -
No.5
書のアヴァンギャルド
柿沼康二の世界 -
No.4
和菓子を愉しむ。 -
No.3
地元写真作家による、
フォトアート 誌上展覧会 -
No.2
もうすぐ春だから、
宇都宮を旅しよう。 -
No.1
坂田甚内という開墾、
ん太郎という愚直。