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No.82
月夜の旅人たち
加藤千代の神秘的な染画の世界
加藤千代の染画を見ていると、不思議な感覚になる。自分の想いがすうっと浮かび上がってくるような、自分の中心が定まるような。
ふだん時間に追われていると、自分が気持ちがどこにあるのか忘れてしまう。というか、どこかに置き去りにしていることに気がつく。何を想っているかなんて確かめなくても、日常生活は流れていくものだ。でも、作品を見ているとまるで夜空を眺めているように、心が静かになって感覚が研ぎ澄まされていく。日常の雑多な出来事も遠いところに消え失せている。
こんな気持ちになるのは作品がすべて月に照らされた夜を舞台にしているからかもしれない。そこに、あるときは月夜にたたずむ女性、あるときは草原を駈けるキツネ、あるときは静かな調べを奏でる人が登場し、深く密やかな夜を自由に飛びまわる。
これらの作品は加藤さんがろうけつ染めに出会うことで生まれた。白い布はろうで描かれ、染められることで少しずつ想いの色に染められていく。
この神秘的な月夜の世界と、染画の道をひとり歩んできた加藤千代の輝く人生をお伝えしたい。
●企画・構成・取材・文/青木 和子
●レイアウトデザイン/都竹 富美枝
●写真/渡辺 幸宏
● fooga No.82 【フーガ 2008年 11月号】
●A4 約80ページ オールカラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2008年10月28日発行